毎年、J1への昇格争いが盛り上がるJ2.

残り9節を残して、勝ち点76で現在1位の横浜FC

(10月12日現在)

悲願のJ1昇格も視野に入ってきました。

しかし、今シーズンの初め、

横浜FCがシーズン開始一試合目に足達勇輔監督を

解任したとき、だれもこの好結果を

予想できませんでした。

それどころか、シーズン開始直後の解任に納得できない

サポーターから応援拒否の動きが出たり、

チーム全体が弱気になり、

サッカーに集中できないような雰囲気でした。

そんなネガティブな状況で監督就任の要請を

受けたのが元日本代表FWの高木琢也現監督。

現役引退後、解説の仕事をしながら、

Jリーグの指導に必要なS級ライセンスを取得し、

将来、監督になるため、足達元監督の下で

現場で指導の勉強がしたいと考えていた

彼からしてみれば正に寝耳に水。

「YES」か「NO」か。自問自答を繰り返す。

しかしチームはオフ日明けの7日から

次の試合に向けて準備に取り組まなくてはならない。

試合は数日後に迫っている。そのとき、

高木氏の脳裏をひとつの思いがよぎりました。

 

「ゲームは待ってくれない。

選手たちはそこにいる。じゃあ誰が監督をやるのか。

自分しかいない。目の前にいる選手を

見捨てるわけにはいかない」

高木氏は覚悟を決め、高木琢也監督となったのです

監督初日となった日、練習グラウンド。

リーグ戦1試合での監督解任という

Jリーグ史上稀に見る出来事に、

動揺を隠しきれない選手たち。

彼らに向けて高木新監督は

落ち着いた口調で思いのままを告げました。


「次のサガン鳥栖戦まで短い時間でしか

準備ができないが、

俺はお前たちを信じている。

だから、俺を信じてほしい 」

その言葉にうつむき加減だった選手たちは、

顔を上げました。

若手選手のひとりの菅野孝憲

「あの時期、ドン底まで行っていたというか、

自信を若い選手とかはみんな失っていた。

だから、高木監督の『信じてほしい』という

シンプルだけど気持ちのこもった言葉で

『気持ちを切り替えて頑張ろう』と思った」

選手たちは、数日後に迫ったリーグ戦に向けて

トレーニングを開始したのです。

そして、高木監督は前監督の良い部分を

引き継ぎつつ、チーム内の決まりごとを少なくし、

まずは守備の強化に力を入れました。

その結果、後に『ハマナチオ』と呼ばれる

強固な守備を中心に15戦無敗など、

好成績を続け、昇格争いの一番手に

躍り出るまでになったのです。

私、個人からすると高木監督は

どちらかというと朴訥で人の良さそうな印象で、

緊急時に集団をまとめ上げられるような

タイプでないと、思っていたのですが、

ピンチのときこそ、本心をさらけ出して

仲間を信じることで、

打開できるという例を実践してくれました。

残り9試合、まだまだ厳しい闘いが続くと思いますが、

つらい状況を乗り切った高木監督と

横浜FCのメンバーがJ1昇格を

実現して欲しいと思います。

NumberWEB より

http://number.goo.ne.jp/soccer/japan/662/20060928-f2-1.html